大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)2613号 判決

被控訴人が本件土地について所有権を有することは当事者間に争いがない。しかし本件口頭弁論の全趣旨に徴すると、控訴人は原審においてはこれを争い、当審においてはじめてこれを認めたものであり、しかもたんに本件土地が被控訴人の所有であることを自白したにとどまり、被控訴人の請求を認諾したものではなく、依然被控訴人の訴の排斥を求めているのであり、従来の控訴人の態度にかんがみれば、控訴人はいつまた被控訴人の所有権を争うかもわからず、本件においては被控訴人において控訴人との間に本件土地の所有権確認を求める利益は解消したものとはいいえない。従つてこの点について判決による実体的確定を求める被控訴人の本訴請求は正当として認容すべきものである。

二、控訴人の反訴請求について。

控訴人の先代斉藤彦蔵が、かねて借地法施行前から、中村源兵衛よりその所有にかかる本件土地を含む四九五・八六平方メートル(一五〇坪)を普通建物所有の目的で期間の定めなく賃借して、同所に建物を所有していたこと、右彦蔵は昭和一七年二月二〇日隠居して、同日控訴人が家督相続により右建物の所有権とともに右賃借人として地位を承継したこと、その後控訴人が右建物をとりこわし、再び同地上にその主張のような建物を建築所有し、これにつきその主張の保存登記をしたこと、右賃借権は遅くも昭和二六年四月九日まで存続し、その後更新されて同四六年四月九日の期間満了によつて一応終了することになつたこと、右中村源兵衛が控訴人主張の日時死亡し、その相続人が一旦承継の上、本件土地を含む四九五・八六平方メートル(一五〇坪)を国に物納したこと、控訴人が右地上に登記した建物を有したため、右賃貸借は国との間に承継されたこと、その後被控訴人が右土地中本件土地を国から分筆の上払下を受けて所有権を取得したことは当事者間に争いがなく、本件土地部分には控訴人所有の登記した建物はないが、控訴人が前記賃借権を国に対抗しえた後に本件土地が分筆譲渡されたのであるから、控訴人の右賃借権が被控訴人の所有権を取得した本件土地に及ぶことは明らかである(もつとも本件賃貸借の始期が借地法施行前であつたことは当事者間に争いがないこと右のとおりであるから、本来ならばその借地期間は同法第一七条第一、二項の適用をみるべき場合であるが、その始期の正確な時点は控訴人において主張しないので、同条項によりその満了時を知ることができないのみならず、事実関係として右賃貸借は大正一〇年四月九日から三〇年間存続し、その後更新されたとすること当事者間に争いない以上、本件賃貸借が現に存在するか否かの当面の争点は、右当事者間に争いないところに従つて判断してさしつかえないものと解する)。

ところで控訴人は、右期間満了にさいし適法な転借人である被控訴人によつて、本件土地の使用を継続しているにかかわらず、土地所有者の被控訴人は遅滞なく異議を述べなかつたから、控訴人の右賃借権は法定更新されたといい、被控訴人はこれを争い、控訴人は土地の使用を継続しているとはいえず、そうでないとしても被控訴人は正当の事由に基づき遅滞なく異議を述べたから、これにより右賃貸借は期間満了とともに終了したと主張する。思うに借地法第六条の趣旨は、借地権が消滅したにかかわらず、なお借地上に建物が存在する場合、本来ならば借地人は右建物を収去して借地を返還しなければならないのであるけれども、借地人が依然として借地の使用を継続しているという事実を重視し、これに対し賃貸人たる土地所有者が異議を述べないという事実と相まつて、本来ならば不法占有であるはずの右状態を適法視し、賃借人を保護し、もつて地上の建物の効用を全うしようとするにある。このことは当該土地の賃貸借の上にさらに適法な転貸借がある場合においても、原則として変ることはなく、たまたま右転借人がその後当該土地の所有権を取得し、賃貸人たる地位を取得した本件のごとき場合においても同様である。この場合賃借人による土地の使用継続は転貸にかかる転借人によるものであつて、転借人の土地の使用はたまたま同人が土地所有権を有するからといつて、その基本たる賃貸借及び転貸借が有効に存する限り、転借権に基づくものであることを否定しえず、賃借人(転貸人)が転借人による間接占有によつて土地使用を継続するとの評価を変えるものではない。この点の被控訴人の所論は採用しえない。

三、よつて進んで被控訴人の右賃貸借終了の抗弁について判断する。本件口頭弁論の全趣旨によると、被控訴人は控訴人が右のごとくにして本件土地使用を継続し、かつその提起した賃借権存在確認の反訴に対して応訴し、今日まで右賃借権の存在を争つていることは明らかであるから、右事実は控訴人の賃貸借契約の期間満了後の土地の使用継続に対し遅滞なく異議を述べているものというべきである(右反訴提起及び被控訴人のこれに対する応訴は前記当事者間に争いない期間満了時の以前であるが、これは当初反訴原告たる控訴人が右期間満了時を昭和四三年一二月末と主張したためであり、その後右主張を訂正して前記のとおりとなつたもので、すでにその期間も経過した本件においては結論に影響ない。)しかして本件土地にはかねてから被控訴人所有の建物が存在することは控訴人の明らかに争わないところであるから、被控訴人が右建物所有のため自ら本件土地を使用する必要のあることもまた疑うべくもない。むしろ被控訴人はその建物所有の必要のため旧地主中村が物納した土地中本件土地を国から払下を受けたものであることは、原審における被控訴人本人尋問の結果により明らかである。これに反し控訴人は本件土地は前々から被控訴人に転貸し、自ら自己の建物を所有するのではなく、賃料取得がその目的であるから、本件土地の賃貸借によつて受ける利益は、賃借料と転貸料との少額の差額の取得に過ぎず、本件土地がなければその賃借地全体の効用に支障あるものでもないことは、原審における控訴人本人尋問の結果に本件弁論の全趣旨をあわせてこれを認めることができる。本件土地を必要とする両者の必要度を比較すれば被控訴人のそれが数段上まわることは多言を要しない。従つて被控訴人には正当の事由があるものというべく、本件土地の賃貸借は、更新されることなく、昭和四六年四月九日期間満了により消滅したものと解するのが相当である。

(浅沼 岡本 田畑)

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